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ネコの手も借りたい情報設計 八匹目
「MIEM:ミーム」その1
Fujii

こんばんは。キャットパッド藤井です。実践で役に立つ設計キーワードをぼちぼち取り上げています。
第八匹目は、大連続シリーズ「MIEM:ミーム」その1です。情報設計の根幹にして本丸の「情報の次元」という考え方に言及していこうと思います。
表紙は、とある工場の窓からのぞくハチワレちゃんです。八匹目だけに。
MIEM:ミームってなに?
「MIEM:ミーム」とは、多次元情報表現方法(Multi-dimensional Information Expression Method)のことで、情報を多次元的に表現する際の手法や考え方をまとめたものです。
「唐突に難しいことを言いはじめたなこの人は。」と思った方へ。要は「複雑な情報を理解したり、表現したりするための考え方」と覚えておいて下さい。なお、私の造語なのでググっても無駄です。最後までお付き合い下さい。
チャートや図説の描き方
みなさんはプレゼン資料や企画書、報告書などを作成する際、グラフ・チャート・図説をどのように描けばいいかを迷ったことはありませんか? そんなあなたに朗報です。MIEM:ミームを正しく理解すれば、日々のそんな悩みもすべてきれいさっぱり解消できます。さあさあ、今すぐ習得しようではありませんか。
さて、日頃からよく目にする「チャート」とは、なんなのでしょうか。あらためて考えると言葉にしにくいですね。「情報をグラフィカルかつ直観的に表現するもの」とでも言えそうです。実際にチャートを描いて確かめてみましょう。(当ブログでは、グラフ・チャートのことは「チャート」という語句に集約します。シソーラスにおけるディスクリプタとか優先語の位置づけです)
東京の月次降水量
上のチャートは、東京の平均降水量を表します。チャートの分類としては「バーチャート」とか「カラムチャート」と呼ばれます。(バーチャートとカラムチャートも同じような意味なので、「バーチャート」で統一します)
バーチャートは、最もよく目にする基本中の基本のチャートです。このフォーマットを発明した人は誰なんでしょうね。天才ですね。直観的でミニマルで合理的。非常に美しいものです。
バーチャートの分析
では、バーチャートを分析していきましょう。上のバーチャートでは、横軸であるx軸が「月」で、縦軸であるy軸が「降水量」となっています。軸が2つあるので、このチャートは2次元情報であると言えます。
軸によっては単位を持ちます。y軸の降水量はmm=ミリメールです。水量なのでミリリットルと考えるかもしれませんが、雨が降った水深を表すのでミリメートルということらしいです。x軸の単位は「月」です。
データだけを抜き出すと以下になります。うーん。これを読解・理解するのは骨が折れそうです。
data: [49.9, 71.5, 106.4, 129.2, 144.0, 176.0, 135.6, 148.5, 216.4, 194.1, 95.6, 54.4]
しかし、上のバーチャートでは、単純に各月の降水量の数値だけでなく、どの月が多いか、少ないか、ということまで直観的に分かるようになっています。
つまり、俯瞰視点で見た、値の大小・パターン・相関関係などを発見できるようになることこそが、情報をチャート化するメリットなのです。チャートってすごい。
ちなみに、私個人は「チャートを適切にデザインすることで、その全体の情報量が、部分の算術的総和の情報量を超える」と考えています。この思想をホーリズムと言います。
表現スロットに、ファセットを投影する
シンプルなバーチャートには、x軸とy軸のスロットがあります。この2つの軸スロットにどのようなファセットを投影するかで、チャートが表現する意味を変化させることができます(※ファセット=情報の並べ方の基準のこと)。このときの「軸スロットにファセットを投影する」という感覚はとても重要なので覚えておいて下さい。
では、表現スロットのファセットを変えて、別のチャートを作ってみましょう。
東京の月次平均気温(データ自体は適当な値を入れています)
x軸はそのままに、y軸に月次の平均気温ファセットを投影してみました。これにより、東京の年間を通した平均気温の推移が見て取れるようになりました。当たり前ですが、夏が高くて、冬が低いことが分かります。
主な都市の年間降水量(データ自体は適当な値を入れています)
次はy軸を年間降水量ファセットに、x軸は主要都市ファセット投影してみます。各都市の降雨量が比較できました。南下するに従い雨量増える傾向がありそうですが、関西から山陽にかけては例外的に少ない、などの法則がありそうです。
このように、伝えたい情報を適切にデザインしてチャート化することで、早く、正確な情報伝達が期待できます。
まとめ
今回は、最も基本的なチャートであるバーチャートを観察して、情報に次元があることを体感していただきました。
とはいえ、まだまだ序盤。3次元や4次元、それ以上の次元を取り扱ったり、複雑な次元を表現スロットに押し込めてみたりと、やることは山のようにあります。
これからどんどんディープになっていくので、ぜひネコの手も借りたい情報設計の大連続シリーズ「MIEM:ミーム」にお付き合い下さい。
カオスな明日にネコパンチ! キャットパッド藤井でした〜。