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ネコの手も借りたい情報設計 七匹目
「ユーザーの味方」
Fujii

こんばんは。キャットパッド藤井です。実践で役に立つ設計キーワードをぼちぼち取り上げています。
第七匹目は「ユーザーの味方」についてです。
表紙は、ニューヨークのラーメン屋の前にいたトラネコちゃんです。
制作会議によくある風景
とあるクライアントが新製品を開発しました。そして、「新製品の紹介Webサイト制作プロジェクト」を立ち上げたと仮定しましょう。あなたはその制作チームの一員であり、情報設計士です。あなたの他にビジュアルデザイナーと、システムエンジニアがいます。さて、各々どのような主張をするでしょうか。皮肉を交えて考えてみましょう。
ビジュアルデザイナー「やるからにはカッコよくしたい。斬新で目を引く表現や粋なアニメーションを試したい。あわよくば世間の注目を浴びたい。」
要約「斬新でカッコよくしたい。」
システムエンジニア「できるだけ枯れた技術を使い回しリスクを減らしたい。仕様変更はゴメンだ。瑕疵はもっと嫌だ。必要な素材を貰って、要件を最低限達成すれば自分の仕事は終わり。」
要約「あと戻り無く、つつがなく終わらせたい。」
クライアント「この商品を売りたい。我が社を世の中にアピールしたい。」
要約「売りたい。」
全員の意見をまとめると、
「商品を売るために、斬新で派手な表現を行なう。進行はウォーターフォールで巻き戻りは無し。」
こんな感じで決まりそうです。
各々、職業的視点と個人的な好き嫌いがはっきり出て、方針にも反映されています。
制作プロジェクトは野望や欲望が重なり合ってバランスをとりながら進んでいきますから、これはこれで悪くはないのですが、ひとつ抜けている視点があります。
ユーザーの味方
抜けている視点、それは「ユーザーの視点」です。
本来、前項のような制作プロジェクトの方針決定の現場でこそ、ターゲットユーザーの意見を重要視するべきです。
しかし、この制作プロジェクト内では、いかに売るか、いかに話題を集めるか、いかにうまく終わらせるかに傾倒していて、ユーザーの意見や利益が話題になることは少ないようです。
ユーザーに見てもらう、使ってもらうためのモノを作るのに、ユーザーが置き去りになっている。なんとも滑稽だと思いませんか? しかし、ユーザーさんが会議に参加することは難しいですよね。
では、どうするか。
答えは簡単。情報設計士がユーザーの味方になればよいのです。
情報設計士である「あなた」が、ユーザー的見地に立ち、ユーザーの代弁者となって意見すれば、方針がユーザーの本意と乖離するのを防ぐことができるかも知れません。
幸い、情報設計士は制作物とユーザーとのインターフェースを設計する役割(画面設計とかGUIとか)も担っています。普段からユーザーの視点を追求している情報設計士が得意とする役回りであると考えます。
では、情報設計士は、ユーザーの味方としてどのような意見を言うのでしょうか。
「商品の外観・スペックを理解できるようにしたい。他の商品と比べて何が優れているか、よく分かるようにしたい。デザインやシステムは「知る」という行為を最大化するためにあれば、それでいい。」
要約「使いやすく、分かりやすく。」
あらためて全員の意見をまとめると、
「ユーザーに商品をよく理解してもらうために、必要なコンテンツと演出と機能を用意する。使いやすさをを判断するために、都度テストユーザーに見てもらう。巻き戻りは極力避けたいが、その判断は進捗状況に応じて適宜行なう。」
こんな感じになりそうです。なんとなく今っぽくなりました。
三方良し
ユーザーを含めた社会全体に配慮する(社会貢献とも言う)考え方は、昔からあります。みなさんは、三方良しという言葉をご存知でしょうか。
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。
売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ。近江商人の心得をいったもの。(コトバンクより)
今回の「新製品の紹介Webサイト制作プロジェクト」に置き換えるとすれば、
売り手(制作者)=あなた
買い手(出資者)=クライアント
世間=ユーザーを含めた社会全体
となります。
世間にとって有用なことをやる。社会貢献をする。そうすることで、みんながしあわせになるという、なんだかありがたい考え方です。
近江商人の心得が現代のモノづくりに通じるのは、興味深いですね。
誤解が無いように補足しますが、「自らの利益を捨て、無償でやれ」とか「クライアントを無視しろ」という意味ではありません。あくまで、自分や世間を含めた「みんなができるだけ幸せになるようにしよう」という考え方です。
自らの野望を達成しつつ、クライアントも世間も幸せにする。そんな欲張りなプロジェクトを成功に導くためにも、あなたもユーザーの味方、「情報設計士」になってみませんか?
カオスな明日にネコパンチ! キャットパッド藤井でした〜。