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ネコの手も借りたい情報設計 六匹目
「情報のシグニファイア」

Fujii

ネコの手も借りたい情報設計 六匹目<br>「情報のシグニファイア」

こんばんは。キャットパッド藤井です。

実践で役に立つ設計キーワードをぼちぼち取り上げています。第六匹目は「シグニファイア(signifier)」についてです。表紙は、さいたま水上公園のフリーマーケットで店番をしていた三毛ちゃんです。

今回は難しいよ

みなさんは、アフォーダンス(affordance)って聞いたことありますか?とある知覚認知学者さんが提唱した概念なのですが、この解釈をめぐってデザイン業界で混乱が起きているんですよね。 詳しい説明は、専門書を読んでいただくとして、まずはアフォーダンスの理解にチャレンジしてみましょう。
アフォーダンスは、動物(有機体)に対する「刺激」という従来の知覚心理学の概念とは異なり、環境に実在する動物(有機体)がその生活する環境を探索することによって獲得することができる意味/価値であると定義される。(Wikipediaより

わーい。すごいね。 全 然 わ か ら ね ぇ (怒)

アフォーダンスの概念は探求すればするほど分からなくなります。哲学みたいなものです。分かりにくすぎて学者さんが間違った解釈を世に広めちゃったり、それが定着しちゃったりしています。なぜ「アフォーダンス」を翻訳無しにデザイン業界に持ち込んだのか、いまだに不思議に思います。別に、この概念を使いこなせなくても良質なデザインはできますから安心して下さい。

さて、解決します。

わかりにくいときは身の丈に合わせて理解します。意識高い飲み会で「やっぱ、アフォーダンスよねぇ」と、唐突に話を振られた際に、情けないナマ返事をしないためにも覚えましょう。

早い話がアフォーダンスとは「●●な感じ」ってことです。

いいんです。これでいいんです!石を投げないで下さい。

例題を作ってみます。

mike-saitama-freemarket
もふもふしてそうな感じ

黒王丸
痛そうな感じ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
座れそうな感じ

いかがでしょうか?それぞれアフォーダンスを感じられたと思います。アフォーダンスは人間が居ようが居まいが普遍的に存在するものなので、アフォーダンスを加工したり、消したり、新しく発生させたりすることは、難しいとされています。「フワフワなネコを見せて、ツルツルだと思わせることは難しい」ということです。

でも、家具デザイナーさんは「いかにも座れそうな椅子」をデザインしていますよね。このとき「アフォーダンスをデザインしている」と言いたいところですが、それについては別の言葉が当てはまります。それが「シグニファイア」です。

また新しい用語が出現しました。シグニファイア(signifier)。聞いたこともありませんね。Wikipediaにも項目がありません。シグニファイアは、アフォーダンスの誤用されていた意味を再定義した新語です。身の丈にあった表現にかえると、以下のようになります。

シグニファイアとは意図を伝えるために付与した「●●な感じ」です。はい!これ!今日は、これだけ覚えて帰ってください。

こまかい話をすればキリがないので、さらっと流すと、デザインにおいてアフォーダンスという言葉は不要、むしろ禁止するべきだと思います。デザイナーは意図を伝えるためにデザインを行うので、デザイナーが付与した「●●な感じ」は全てシグニファイアとなるからです。

さて、面白いことに、どの文献でもアフォーダンスとシグニファイアは「機能性(何ができるか。何をするものなのか)」の話になります。プロダクトデザイン的な観点から出発しているからでしょうか。不思議に感じます。

情報のシグニファイア

情報設計を探求するための当ブログとしては、ここからが本番です。情報設計にも、ボタンやフォームパーツなど、プロダクトデザイン的な側面がありますが、機能性やインタラクションとは別に、もっと静的な情報にシグニファイアを付与してみることはできないでしょうか。

下の数字を見て下さい。何の数字かわかりますか?

3438501
0489642111
6988054045408119

うーん、このままでは分かりません。ではシグニファイアを付与してみましょう。

〒343-8501
048-964-2111
6988-0540-4540-8119

コレなら分かりますね! 順に、郵便番号、電話番号、カード番号ということがピンときた方が多いと思います(カード番号はちょっと難しいかな? )。それこそが情報にシグニファイアを付与した効果なんですね。

上記の例のシグニファイアをあぶり出してみましょう。数字をxに置き換えると、下記のようになります。

〒xxx-xxxx (冒頭が〒で、3桁+4桁の数字の羅列)(越谷市役所の郵便番号でした。)
0xx-xxx-xxxx (冒頭が0で、3桁+3桁+4桁の数字の羅列)(越谷市役所の電話番号でした。)
xxxx-xxxx-xxxx-xxxx (4桁x4スロットの数字の羅列)

ほら! 数字が入っていなくても、それぞれ何の情報なのか分かりませんか? 少なくとも、最初の数字の羅列よりは「●●な感じ」がしますよね。このような、桁数、区切り、記号などを駆使し、人間の持つ認知力を高める要素のことを、「情報のシグニファイア」と呼ぶことにします。

まとめ

今回は、かなり難解な概念と用語を紹介いたしました。情報のシグニファイアという考え方に慣れ、使いこなせるようになってくると、「●●な感じ」を演出することが楽しくなってきます。

難しく考えず、身の回りの「情報のシグニファイア」、つまり、意図を伝えるために付与した「●●な感じ」を探してみませんか?

カオスな明日にネコパンチ! キャットパッド藤井でした〜。

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